最終更新日 2024年10月13日 by Mashup Reporter 編集部
旅行好きには残念ですが、海外旅行は年々価格が高くなる傾向にあります。米国およびニューヨークに関していうと、主な要因として、円安傾向の為替相場、燃料費の上昇、パンデミック後の物価高騰、人件費の上昇が挙げられます。これに加えて、行政政策による移民のシェルター確保のためのホテル借り上げ、民泊規制の厳格化が宿泊施設の供給量を圧迫し、宿泊費を押し上げています。それではニューヨークに渡航する際の旅費はどれほど用意すれば良いのか。割安に抑えるコツや目安をご案内します。
安い季節は?
ニューヨークのホテルの宿泊費は1月と2月が相対的に安く、9月~12月にかけて高騰します。一方、国際線の運賃は一般的に2月、6月、11月が低下する傾向にあると言われています。つまり、価格だけを考えれば1月~2月、次いで6月~7月が、比較的リーズナブルに旅行することができます。ただし1月~3月にかけては厳しい寒さに加えて主要なイベントが少ないため、街に活気があって過ごしやすい6月ごろがおすすめです。
飛行機チケットは季節・曜日を考慮に
週末高くて、平日安いは国際線にもあてはまります。アメリカン航空(大人一人・羽田⇄JFK国際空港往復・Expedia)で10月の最終週の値段を比較すると、最高値が日曜日で、最安値の月・水・木との差額は1万2,910円となりました。
旅行保険はカード付帯で十分?
米国は医療費が高く、長らく社会問題になっています。ヘルスケアプロバイダーであるMiraの調査によると、ニューヨークの1回の一般的な診察にかかる費用は、保険なしの患者で141ドル、検査を必要とした場合は追加でコストがかかります。さらに薬を処方されるとその分の費用が必要になります。救急外来の受診1回あたりの費用は平均1,825ドルに上ります。万が一骨折した場合、平均の治療費は1万ドルを超えるとされます(全国平均、Mira)。旅行中は自分の身に何が起きるかわからず、他人に怪我をさせてしまうリスクもゼロとは言えません。万が一を考えて十分にカバーできる保険に加入することをおすすめします。
クレジットカード付帯の海外旅行傷害保険は、楽天カード(利用付帯)の場合、傷害死亡・後遺障害の最高額が2,000万円、賠償責任が3,000万円、傷害と疾病治療費用の限度額がそれぞれ200万円で、携行品損害はついていません。ただし、保険が適用されるには「日本を出国する以前に 『募集型企画旅行の料金』 に該当する代金」を支払っていることとあります。つまり、旅行代理店を介さずに個人ですべてを用意した場合は適用されないということですので、注意が必要です。個人的には万が一に備えて、傷害と疾病治療、賠償責任をより充実させたいと感じますので、カード付帯の保険に加えて損害保険会社の海外旅行保険商品を検討するのが無難だと思います。
ビッグマックセットが2,000円!ニューヨークの食事は高い
コロナ後の急激な物価高騰については、ニュースでご存知の方も多いかと思います。数年前にニューヨークではラーメンが一杯2,000円を超えるなどと話題になったことがありましたが、今ではファストフードがその値段(ビックマックセット 約14ドル=約2,000円)です。感覚的には、旅行中の食事をリーズナブルに抑えようとした場合、朝食は適当に済ますとして、昼食に25ドル、夕食に50ドル程度を見ておきたいところです。もちろん名の通ったレストランに行けば、それなりに高額です。旅行の目的と懐具合を考えて、予算を決めましょう。
<ご参考>お食事の価格(筆者の好みです)
・Murray’sのスモークサーモンベーグルサンド:14.95ドル
・Crif Dogsのチワワホットドッグ:7.95ドル
・SriPraPhai(クイーンズ地区)のグリーンカレー:15ドル
・ピータールーガー(ブルックリン)のシングルステーキ:70ドル
・ユニオン・スクエア・カフェのハンバーガー:29ドル
・ファイブ・リーブス(ブルックリン)のリコッタ・パンケーキ:22ドル
忘れてはならないのがチップです。日本人に馴染みのない文化ですが、予算を立てる際にはチップを含めた金額を考慮に入れておきましょう。レストランの場合、チップは通常15%〜20%程度です。支払い・計算方法は「アメリカ旅行 チップの払い方ガイド 2024」をご参考ください。
ニューヨーク市内の移動:地下鉄はコンタクトレスで
ニューヨークは全米で最も地下鉄が発達している都市(日本に比べるとお粗末ですが)ですので、市内の移動は地下鉄かバスで事足ります。日本の鉄道と異なり、運賃は一回乗車あたり一律で2.9ドルとなります。乗車駅でチャージ式のメトロカードを購入するか、クレジットカードまたはスマホであれば改札のコンタクトレス機器(OMNY)にタップするだけで、乗車が可能です。メトロカードの場合はカード料金として1ドルが余分にかかりますので、クレジットカードまたはスマホ決済がおすすめです。タップ式の場合、7日間いくら乗車しても上限が34ドル(約12回分の乗車に相当)に設定されていますので、たとえ3泊程度の旅行でも、あちこち観光して回ることを考えれば、すぐに元が取れるでしょう。
アトラクションは観光パスでお得に
人気・定番アトラクションを巡るなら、観光パスを購入することをおすすめします。観光パスでは「Go City」「City Pass」「New York Sightseeing Pass」の3つが代表的です。いずれも複数の施設を回るなら、それぞれのアトラクション料金を払うよりも割安になることがメリットですが、おのおの仕組みが異なります。
Go City | 100箇所以上のアトラクションを網羅。料金体系は、訪問するアトラクション数による「Explorer Pass」と、利用日数に応じて価格が異なる「All-Inclusive Pass」の2種類がある。 | Explorer Pass:169ドル(5箇所の場合、初回利用から60日間有効) All-Inclusive Pass:259ドル(3日の場合) |
City Pass | 8箇所の中から5箇所(そのうち2箇所は固定)を選べる定番パス。 | 146ドル(一律、9日間有効) |
New York Sightseeing Pass | 150箇所以上のアトラクションを網羅。Go Cityと同様に、利用日数ベースの「Day Pass」とアトラクション数ベースの「Flex Pass」がある。 | Flex Pass:169ドル(5箇所の場合、初回利用から60日間有効) Day Pass:259ドル(3日の場合) |
上の表のように仮にアトラクションベースで5箇所訪れるとした場合、「City Pass」が最安値で、「Go City」と「New York Sightseeing Pass」は同水準です。コツとしては、どのアトラクションを何日間をかけて回るのかを明確にすれば、自然と自分にあったパスを選ぶことができます。
例えば3泊5日を想定し、このうちの2日をアトラクション観光に割くとしましょう。訪問できるアトラクション数は1日あたり2箇所、多くて3箇所といったところでしょう。そうすると訪問先は5箇所程度ということになります。
なおCity Passでは5箇所訪問できますが、選択肢は次の8つに限られます。
・エンパイア・ステート・ビルディング展望台
・アメリカ自然史博物館
・トップ・オブ・ザ・ロック展望台
・自由の女神像とエリス島へのフェリー移動
・9/11メモリアルとミュージアム
・サークルライン観光クルーズ
・イントレピッド博物館
・グッゲンハイム美術館
(このうちエンパイアビルとアメリカ自然史博物館は固定ですので、それ以外の3つを5つの選択肢から選ぶことになります)
定番をカバーしているので、これで十分という方もいるでしょう。しかし展望台を例にすると、このほかに世界貿易センタービル跡地に建設された「ワンワールド展望台」や「エッジ」、ワン・バンダービルトの展望台「サミット」といった比較的新しい施設も人気です。また「Go City」のラインナップには、グッゲンハイムのほかに、ホイットニー美術館やMoMAが含まれ、アート好きの方に適しています。いずれにせよ訪問先と日数を特定し、比較検討するようにしましょう。
その他スポーツ観戦やブロードウェイのミュージカル、スタンダップコメディ、各種コンサートのスケジュール確認、予約は米チケット大手、チケットマスターが便利です。
ホテルはマンハッタン以外の選択肢も
冒頭に説明したとおり、ニューヨーク市内のホテルは、供給減によって価格が高騰しています。ニューヨークタイムズによれば、2023年の一泊あたりの平均宿泊費は301.61ドルとなり、前年の277.92ドルから8.5%上昇。今年の第一四半期は前年よりも6.7%上昇しています。ホテルの激戦区マンハッタンは最も高い傾向にあります。ホテル宿泊費を抑えたい場合、隣地区のクイーンズを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。
例えばこの記事を執筆している時点で、10月後半の値段を調べると、マンハッタンでは大半が一晩5万円〜であるのに対して、マンハッタンの中心地に地下鉄で10分ほどのクイーンズボロプラザ駅周辺のホテルは4万円前後で探すことが可能です。比較サイトで徹底的に検索して予算にあったホテルを探しましょう。
なお、このあたりは近年再開発が進みましたが、夜遅い時間になると人影が少なく、危険に感じる地域もあります。口コミ評価だけでなく、治安を考えて駅からできるだけ近いホテルを予約しましょう。
ちなみにホテルはほとんどの場合、2人用にアレンジされていて、宿泊料金は「ダブルオキュパンシー(double occupancy)」を基準に設定されています。そのため2名で宿泊する場合、宿泊費を分担することができ、1人あたりの料金が抑えられます。お1人の場合、シングルオキュパンシー(Single Occupancy)レートが適用されて、2人で泊まるよりも高額になるケースもあります。
ネットはどうする?海外SIM、WiFiレンタルは必要?
ニューヨーク市ではパンデミック前から無料Wi-Fiネットワークのプロジェクト(LinkNYC)が進み、街中のいたるところで高速インターネットが利用できます。カフェやデパート、観光施設、地下鉄も無料Wi-Fiを導入しており、もちろんホテルでもフリーで利用できるのが一般的です。
そのため、マンハッタンに限って言えば、一般的なユーザーであれば海外SIMを購入したり海外WiFiルーターをレンタルしなくても困りません。ただし、郊外に足を伸ばしたりする場合には、用意が必要でしょう。その場合、お手持ちのデバイスが対応していれば、SIMカードまたはルーターといったものよりも、最近では物理的的な受け取りの手間や時間、破損の心配のないeSIMがおすすめです。選ぶ際には旅行先の国への対応、必要なデータ通信量と価格のバランス、デバイスの対応、日本語サポートが必要かといった基準を元に判断しましょう。
お土産はニューヨークオンリーを
意外に頭を悩ますお土産選び。日本に進出している店も多く、せっかく買って帰ったのに日本にあったなんてことも。ただし、フラッグシップ店が立ち並ぶニューヨークでは、限定アイテムが豊富です。スターバックス、ラルフ・ローレン、ハリーポッター店、ディズニーストア、リーバイス、ハードロックカフェなど、名だたるお店のご当地グッズを検討してみるのもおすすめです。お土産選びは、記事「喜ばれるニューヨークお土産アイデア 定番から最新まで」をぜひご参考ください。
ニューヨーク旅費シミュレーション
*3泊5日 10月28日出発・現地発10月31日を想定。為替相場は1ドル=143.23(9月6日時点)で計算。見積もり料金は9月6日時点のもの。
名目 | 費用(円) | 内訳 |
飛行機チケット | 104,450 | Expedia調べ:アメリカン航空 羽田⇄JFK エコノミークラス往復料金 |
海外旅行保険 | 3,070 | 東京海上日動 契約タイプ「エコノミー」の見積もり結果 |
ホテル | 150,000 | クイーンズの相場を参照 |
食事 | 42,980 | 1日100ドルで計算。 |
交通費(現地) | 7,305 | 34ドル+17ドル(Air Train:空港と地下鉄をリンクする鉄道。片道8.5ドル) |
アトラクション観光 | 20,912 | City Pass(146ドル)を利用 |
eSIM | 3,680 | World eSIM 無制限5日プラン |
お土産 | 20,000 | – |
ESTA(電子渡航認証システム)申請費 | 3,008 | 21ドル |
合計 | 355,405円 | – |
いかがでしたでしょうか。もちろんこれよりも切り詰めた旅行も可能ですし、贅沢しようと思えばキリがありません。想定しました10月後半は、冬に向けてハロウィンなどのイベントが盛り上がるピークシーズンですので、高めにつきます。一つの目安として参考にしていただけると幸いです。現地でクレジットカード決済した場合、カード会社の処理時点の為替レートが適用されるほか、事務手数料が加算されますので、上記金額もりよりも高くなる可能性があります。なお、ホテルは二人部屋料金ですので、2人で旅行されると1人の負担が減ります。出発前に現金を用意される場合、”アメリカ旅行 現地で円をドルに両替する方法”も合わせてご参考ください。
Happy Trip!
<参考>
New York Times “Why N.Y.C. Hotel Rooms Are So Expensive Right Now”
Market Watch “Yes, that Big Mac meal may cost $18 — but there’s one good reason for it”
Mashup Reporter “エアビー規制でニューヨークの短期レンタル75%が消滅、ホテルへの影響は?”